真夜中に出発した課外演習の一行は、日の出を待ちわびる生徒たちの声がこだまする中、提灯を片手に岩手火山を探索しています。

そのはるか彼方の上空には、折りしも地球照をうけた月が赤くかがやき、教員として生徒たちの無邪気な質問に忙しく答える賢治さんの心を、不思議な幻想世界に誘います。

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詩人としての賢治さんが天を仰ぐと、赤い月は津波のように厚い雲をものともせずに、まっすぐ西へと進んでいました。
その力強い推進力を、賢治さんは巨大な帆船に見立て鉛筆を走らせます。

​私は、月との対話がきちんと交信なされた証拠として、賢治さんの手帳から３ページ分を抜き出し、作品に描きました。