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「私が恋をしていた頃」

When I was in Love (2019)

Concept

藤原定家卿和歌より女の立場から詠まれた恋歌などを本歌として、七夕伝説の織女を描きました。
 
年に一度の逢瀬を指折りかぞえながら日々の労働にはげみ、疲れた体を横たえた或る夜のこと。
ひとり寝で、ふいに下紐がほどけていることに気づいた瞬間、空白の隣にうちとけて話した牽牛の声や、ふしばった指でゆったりと髪をなでてくれたときの感触がまざまざと思い出されて、たえがたく身をよじる織女。
彼女の頬をつたう涙を吸って海松布が根をはり、幸福な約束が内側からゆっくりと崩れていく。
それでも、この愛を手放すことができない。
彼が優しく私に微笑むから。

Inspiration

「むすびけん昔ぞつらき下紐の一夜とけける中の契りを」

 藤原定家・74

「わかれての思ひをさぞとしりながら誰かはときし夜半の下紐」

 藤原定家・2508

「うづらなくゆふべのそらをなごりにて野となりにけり深草の里」

 藤原定家・343

「あらざらむ後の世までをうらみてもその面影をえこそうとまね」

 藤原定家・864

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