よみひとしらず 和歌「あかずして」
あかずしてわかるるそでのしらたまを君がかたみとつつみてぞ行く
叶うことなら、私はもっとたくさん、あなたとこうして親しく語らっていたいのです。
しかし今、お別れの時間となってしまいました。
名残惜しさのあまり、私の袖を濡らすこの大粒の涙は、あなたへのまっすぐな思いが結晶した白玉なのでしょう。
あなたと過ごした幸せなひとときの形見として、私はこの白玉を誰の目にもふれぬよう大切に包んで、持って帰ります。
名残惜しさに落涙する目元をぬぐい、しっとりと濡れてしまった袖を歌う。
(涙の粒=白玉=真珠)
真珠は、海底にすむ貝の体内でゆっくりと時間をかけて、核を何層もの膜で覆うようにして作られる。
真珠の連想から、この和歌に歌われた二人の恋がどのようなものであったのかを想像することができる。
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