top of page
私は、日本の古典文学を敬愛し
和歌や近代詩を本歌として
作品を描いています。

​ほんか-どり【本歌取り】(名)

意識的に昔の歌をもととして作歌すること。主として和歌に用いられる技巧で、背後にある本歌(古歌)と二重写しになって、余情を深める効果がある。余韻余情をたっとぶ新古今の時代に特に重んじられた表現技巧である。​『旺文社古語辞典』より

よみひとしらず 和歌「あかずして」

よみひとしらず 和歌「あかずして」 あかずしてわかるるそでのしらたまを君がかたみとつつみてぞ行く 叶うことなら、私はもっとたくさん、あなたとこうして親しく語らっていたいのです。 しかし今、お別れの時間となってしまいました。...

よみひとしらず 和歌「わが君は」

よみひとしらず 和歌「わが君は」 わが君は千代にやちよにさざれいしのいはほとなりて苔の生すまで 敬愛します我が君は、どうか千年も万年もご長寿でめでたくございますように。 小さなさざれいしが、やがて大きな岩となるまでに成長し、やがてその力強い岩肌に緑深い苔が生え覆うまでに。と...

よみひとしらず 和歌「大空の」

よみひとしらず 和歌「大空の」 大空の月の光し清ければ 影見し水ぞまづ凍りける(古今和歌集・冬歌・316) ​ 今夜大気は澄みわたり 大空を照りゆく月は冴え冴えとひかり輝いている。 ごらん そのあまりの清らかさに 月影を映した水が、あらゆる夜の命のなかで...

紀貫之 和歌「袖ひぢて」

紀貫之 和歌「袖ひぢて」 袖ひぢてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらん 夏の日差しを反射してきらきらと滴る雫で袖を濡らしながら両手ですくいあげた清水を。 秋経て冬となり、あのときの清水がまっしろに凍りついたのを、立春を迎えた今日、...

『小倉百人一首』

『小倉百人一首』 ※随時更新中。 001 秋の田のかりほの庵の苫を荒みわが衣手は露に濡れつつ(天智天皇・後撰・秋中) 秋の稲田の番をするために建てた仮の小屋で夜を明かして見張っていると、その屋根をふいた苫の網目があらいので、私の袖は夜露にしきりにぬれることだ。...

清原深養父 和歌「冬ながら」

清原深養父 和歌「冬ながら」 冬ながらそらより花のちりくるは雲のあなたは春にやあるらむ 今は花のないはずの雪に閉ざされた冬でありながら、空から六花のかけらがちらちらと降りおちてくる。ははあ、なるほど。あの灰色にみだれた雲の向こう側はもう春がきているのだろう。...

藤原敏行朝臣 和歌「白露は」

藤原敏行朝臣 和歌「白露は」 白露は色をひとつをいかにして秋のこのはをちぢにそむらむ ​私がそこを訪れたとき、夜露にしっとりと濡れそぼった山野の草木は、秋の色をまとってあらゆる紅葉となっていた。 いったい、この露というものは、人の目には白一色にしか見えぬが、どのようにして、...

清原深養父 和歌「幾世経て」

清原深養父 和歌「幾世経て」 幾世経て後か忘れむ散りぬべき野辺の秋萩みがく月夜を たとえ幾世経とうとも忘れることができましょうか。 いいえ、忘れはしません。 あとは散るのみとなった、枯れ果てたこの秋萩たちに、やわらかな光を注いで輝かせる、 この慈愛に満ちた月夜の光景を。...

建礼門院右京大夫 和歌「月をこそ」

建礼門院右京大夫 和歌「月をこそ」 ▽原文 十二月一日頃なりしやらん、夜に入りて、雨とも雪ともなくうち散りて、村雲騒がしく、ひとえに曇り果てぬものから、むらむら星うち消えしたり。引き被き臥したる衣を、更けぬるほど、丑二つばかりにやと思ふほどに、引き退けて、空を見上げたれば、...

柿本人麻呂 和歌「天の海に」

柿本人麻呂 和歌「天の海に」 天の海に雲の波立ち月の舟星の林に漕ぎ隠る見ゆ(『万葉集』1068) 海と見間違うほどに深い藍色をした天の夜空に、 透きとおった雲が白波のように幾重にもたちのぼっていくのがみえます。 きらめく銀河に浮かぶ月は、西に向かって舵をとり、...

清原深養父 和歌「夏の夜は」

清原深養父 和歌「夏の夜は」 月のおもしろかりける夜あかつきがたによめる 夏の夜はまだ宵ながらあけぬるを雲のいづこに月やどるらむ (月の美しかった夜の明け方に詠んだ和歌) 夏の夜はまことに短く、まだ宵であるからといってのんびり月を楽しんでいたら、もう朝になってしまった。...

『古今和歌集』仮名序

『古今和歌集』仮名序 やまとうたは、人のこゝろをたねとして、よろづのことのはとぞなれりける。よの中にあるひとことわざしげきものなれば、心におもふ事を、みるものきくものにつけていひいだせるなり。はなになくうぐひす、みづにすむかはづのこゑをきけば、いきとしいけるものいづれかうた...

謡曲「融」原文

謡曲「融」 季節-秋の半ば過ぎ ワキ-東国からの旅僧 前シテ-老人 後シテ-左大臣源融 ワキ詞 これは東国方より出でたる僧にて候。我いまだ都を見ず候程に。此度思ひ立ち都に上り候。 下歌 おもひ立つ心ぞしるべ雲を分け。舟路をわたり山を越え。千里も同じ一足に。千里も同じ一足に。...

謡曲「隅田川」原文

謡曲「隅田川」 ​​ワキ詞 これは武蔵の国隅田川の渡守にて候。今日は舟を急ぎ人々を渡さばやと存じ候。又此在所にさる子細有って。大念仏を申す事の候ふ間。僧俗を嫌はず人数 を集め候。其由皆々心得候へ。 ワキツレ 末も東の旅衣。末も東の旅衣。日も遥々の心かな。...

宮沢賢治「インドラの網」

「インドラの網」 ​ そのとき私は大へんひどく疲つかれていてたしか風と草穂との底に倒れていたのだとおもいます。 その秋風の昏倒の中で私は私の錫いろの影法師にずいぶん馬鹿ていねいな別れの挨拶をやっていました。 そしてただひとり暗いこけももの敷物を踏んでツェラ高原をあるいて行き...

宮沢賢治「東岩手火山」

「東岩手火山」 月は水銀 後夜の喪主 火山礫は夜の沈澱 火口の巨きなえぐりを見ては たれもみんな驚くはずだ (風としずけさ) いま漂着する薬師外輪山 頂上の石標もある (月光は水銀 月光は水銀) ≪こんなことはじつにまれです 向うの黒い山……って それですか...

宮沢賢治「月天讃歌(擬古調)」

「月天讃歌(擬古調)」 ​ 兜の尾根のうしろより 月天ちらとのぞきたまえり ​ 月天子ほのかにのぞみたまえども 野の雪いまだ暮れやらず しばし山はにたゆたいおわす ​ 決然として月天子 山をいでたち給ひつつ その横雲の黒雲の さだめの席に入りませりけり ​...

宮沢賢治「月天子」

「月天子」 ​ 私はこどものときから いろいろな雑誌や新聞で 幾つもの月の写真を見た その表面はでこぼこの火口で覆われ またそこに日が射しているのもはっきり見た 後そこが大へんつめたいこと 空気のないことなども習った また私は三度かそれの蝕を見た 地球の影がそこに映って...

宮沢賢治「原体剣舞連(mental sketch modified)​」

「原体剣舞連(mental sketch modified)​」 ​ dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah こんや異装のげん月のした 鶏の黒尾を頭巾にかざり 片刃の太刀をひらめかす 原体村の舞手たちよ 鴾いろのはるの樹液を アルペン農の辛酸に投げ...

宮沢賢治「有明」

「有明」 起伏の雪は あかるい桃の漿をそそがれ 青ぞらにとけのこる月は やさしく天に咽喉を鳴らし もいちど散乱のひかりを呑む (波羅僧羯諦 菩提 薩婆訶) ▽漿【こんず】 うまい汁の意味。極楽浄土に実る桃の果汁の意味。 ▽波羅僧羯諦/菩提/薩婆訶【ハラサムギャティ/ボージュ...

1
2
bottom of page