top of page
執筆者の写真青木静香:Visual Artist

清原深養父 和歌「幾世経て」


清原深養父(生没年不詳)は、平安時代中期の歌人。貴族。中古三十六歌仙のひとり。ユーモアにあふれた見立てによって、景物は親しい友となる。

清原深養父 和歌「幾世経て」


幾世経て後か忘れむ散りぬべき野辺の秋萩みがく月夜を


たとえ幾世経とうとも忘れることができましょうか。

いいえ、忘れはしません。

あとは散るのみとなった、枯れ果てたこの秋萩たちに、やわらかな光を注いで輝かせる、

この慈愛に満ちた月夜の光景を。

真っ赤に燃え上がる紅葉の時期をすぎると、木枯らしにさらされた草木たちは死を迎えます。

枯れ果てた枝の先に、昼夜の寒暖差によってできた白露が、月の光を受けて宝石のごとくきらきらと輝く景色に、深養父は月の慈愛を見たのでしょうか。

敗者の立場から和歌を詠むことの多い、深養父らしい美の発見だと思います。

余談ですが、ギリシャ神話にエンデュミオンという物語があります。

永遠の眠りと引き換えに手にした若さとは、この白露の輝きのことのように私は思います。

​月の愛をうけて輝く、はかないもの・・・。


 
閲覧数:144回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page